スマホの新製品向けペンセンサー・システムの見通しが不透明
ペンタブレットの分野で世界的な特許網を構築
1983年7月設立。翌84年に世界初のコードレス電子ペンとタブレットを開発。90年にディズニーに採用されたのを契機に日米の映画製作現場に大量納入を実現した。その後、自動車デザインなどの工業デザイン分野でも成功を収め、プロのクリエーター用ペンタブレットの世界シェアは約80%に達する。その後、スマートフォンやタブレット端末用のペン・センサーシステムで急成長したが、逆にリスクも抱えることにもなった。15/3期の売上構成比は、プロ用を中心とする自社ブランド事業が58%、スマートフォン向けなどのコンポーネント事業が41%、その他1%の割合である。
ワコムの独自技術のMER(電磁誘導式)ペンタブレットは、入力するためのスタイラスペン、ペンからの情報を感知するセンサーを敷き詰めたセンサーボード、コントロール用の半導体(ASIC)などで構成され、同社は世界的な特許網を構築している。さらに、独自の静電容量型のアクティブESペンを開発した。センサーボードが不要なため、広範な分野での採用をめざす。コア部品についてはブラックボックスとして埼玉県の本社工場で製造、ただし、基本はファブレスで主に海外で生産。近年は、プロ用ペンタブレットのモバイル化への対応、自社負担によるペン生産の自動化によるコスト削減と品質確保、Eコマースシステムの構築による直販を推進する。
投資評価は2を継続
2015年2月から5月にかけて、2015年3月期3Q(14年10-12月)の業績回復が好感され、600円を超える株価水準を実現した同社株だが、その後、サムスン電子のスマホの販売不振の表面化、つれて同社向けスマホ用ペンセンサーの出荷急落を背景に、株価は再び400円台に下落し、一進一退が続いている。タブレットPCも含めてサムスン電子向けコンポーネントへの依存度が高い状況が続いていることから、今後も出荷繰り延べや減産のリスクがつきまとうことが、業績の不確実性を高め、株価の上値を抑えている。株価はすでに低位にあると判断されるが、投入が予定されているサムスン電子のスマホ新製品の発売について概要が明らかになる今秋以降まで様子をみるべきで、投資評価は中立を継続する。
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