経営危機に瀕するシャープと今後@日曜アナリスト
「世界の亀山モデル」というキャッチフレーズとともに、液晶テレビ事業で名を馳せたシャープが今、経営危機に瀕している。
2009年以降は年を追うごとに株主資本が減少し、このままでは連結で債務超過に陥ることは不可避となっている。デットエクイティスワップを実行すれば財務上の問題は一時的に解消され、ひとまず危機を脱することはできるものの、完全にシャープという会社が買収されない限り、この会社が投資に値する企業価値を取り戻す可能性はほぼ皆無といえる。
シャープが投資に値し得ない理由としては、大きく分けて3つある。
第一の理由は、リストラによる求心力の低下、社員の離脱によるブランド毀損と品質の低下による中長期的な売上の低下が予想されることだ。2011年、2015年と合わせて5500人の早期退職を募集、自己都合退職する社員も多く、従業員数も2011年の21500名(単体)から17500名まで減少している。社員のモチベーションも低いことは当然に予想され、売上が回復する環境が取り戻せる状況にあるとはいいがたい。
次に、そもそもそのリストラを行っても、経営効率は一切改善を見ていないという点である。
2013年にリストラを行ったことで原価率は下がっている(ただし2014年にはまた上がっている)。しかし、2013年の原価率をよく見てほしい。そもそも2011年の原価率水準にすら達していない。売上が回復しなければコスト削減を行っても業績回復など到底不可能なのだ。
最後の理由は、投資家の立場から見るシャープ株という存在の信頼性である。シャープは債務超過回避の必要があったことから、これこそがシャープ株への投資を投機たらしめる最大の原因といえる。デットエクイティスワップが実施されれば、当然に既存株主の株式価値は低下してしまう。 これらを考慮すれば、一般的な投資価値としてシャープの企業価値を評価する要素はないといえる。
ただし、ここまで酷評したもののシャープという企業に費用を投じる価値は、まだ残っている。それはシャープが製造業であり、知的財産・ノウハウ・既存顧客を未だ多く持っているということだ。株価の毀損が続くと、時価総額の低下から買収は容易になる。資産として評価できない見えない資産を評価するならば、買収される可能性はあるといえる。 見えない資産の評価と救済への期待こそが、現在のシャープに投機する価値である。
ご意見、レビューリクエスト等コメントで募集しております。IT業界と半導体部門を得意としていますので、他の分野については希望に添えない場合もございますが、可能な限り対応いたします。
レビューはitandscの分析・予測によるものです。最終的な投資・投機判断はご自身によって行ってください。
コメントを書くにはログインしてください。
無料会員登録がお済みでない方は、こちらよりどうぞ。
コメント
コメントありがとうございます。アイスタイルについては以下の内容でレビューを投稿しました。
申請が通過し次第ご確認ください。
https://valuationmatrix.com/reviews/20
海外展開については短期的には不採算部門ですが、すでに@コスメが国内ターゲットのほとんどをカバーして伸びしろがないことから、長期的視点での投資を目的として実施されているものと解されます。短期的には利益に結実しないと見るべきです
決算発表から連日急騰を見せている、アイスタイルについてご意見いただけますでしょうか。
気になる点は最終的な着地の見込みと当社の海外展開をどう読めば良いかです。