セブンは、なぜニッセンを買収したのか? ~進化するビジネスモデル~
セブン&アイが、ニッセンを買収したのには、中長期の戦略を見据えた明確な理由がある。 そのヒントは、ラストワンマイル、つまり家まで直接届ける小売の最終形を完遂させることだ。
セブン&アイ ホールディングスが、ニッセンを買収しました。 この意図を多くの人は図りかねているのではないかと思います。
僕は、このニッセンの買収はセブン&アイのビジネスモデルに大きなインパクトを与えると思います。
その理由をご説明しましょう。
言うまでもなく、今のセブンの主力は、コンビニ業態です。 近くて便利、でも定価販売という30年前は画期的だったこのモデルですが、しかし、 今後の30年は衰退してゆくでしょう。
セブンはその次の時代の社会構造を見据えています。
それは、超高齢化社会におけるラストワンマイル、つまり家から出ない客1500万人にものを 売る小売業ということです。その市場規模は、7000億~1兆円になると試算されます。
セブンは今でもネットスーパー事業を展開していますがまだまだ不十分。近くのイトーヨーカドー から食材をピックアップして届けるというおまけ的なやり方です。刺し身など生ものも難しい。
今後は、あらゆる食材を、ごく短い時間で、誰でも簡単に注文できるしくみを整えていきます。
そこでニッセンが持つ高齢者層の顧客リスト、通販ノウハウ、電話などのカスタマーさポート というノウハウが生きてくる。 小売業を超えて家まで届けるラストワンマイルのモデルの確立に 今回の買収は不可欠だったと言えます。
セブンに対し、ローソンやファミリーマートはまだまだコンビニ業態の完成形を目指している。 POSによる仮説検証や流通の整備、製品開発、店舗開発に力を入れている状態です。 セブンに追いつけ、追い越せというテーマで動いています。その一方でセブンはコンビニを捨て、 次の次元へとビジネスを進化させるでしょう。
この家まで届ける(ラストワンマイル)というモデルで、活躍する企業は、他には、ヤマトホールディングス です。Amazonの要求に耐え切れず撤退した佐川と違って、ヤマトの宅配便体制はより強い。 そのうち、月額2980円で宅配便使い放題といったビジネスモデルも出てくるでしょう。 そうなると、ますます家と企業、家と家をシームレスに結ぶ時代がやってくると思います。 そうなれば、ものを買って所有するのではなく、皆でクラウド的(仮想的)にシェアしておいて、 必要な時に、送ってもらって使って返す、という社会になってゆくでしょう。モノが家から減ります。 車も、楽器も、バーベキュー/アウトドアセットも、パーティーグッズもワイングラス/セラーもそう。 物流の発達は生活スタイルに大きな変化をもたらすのです。 小売業もどんどん「富山の薬売り」的ビジネスモデルを採用するに違いありません。 つまり、家の玄関横に鍵のかかるボックスを用意して、そこに商品をおいておく。毎週、周回して 商品を補充し、家の人が使った分だけをあとで引き落とすモデルです。水の宅配などが今は 中心ですがもっと増えてゆくでしょう。当然、オフィス内にもそのようなボックスも増えるはずです。 (オフィスグリコですね)
思えば、コンビニ業態は、通信業界でいうところのADSL、車業界でいうところのハイブリッドカー、 つまり中途半端な存在でした。やはり本命は光通信であり、電気自動車(EV)であるのと同様、 日常品・食品の販売は、直接、通販/ネットで行うというのがシンプルになるでしょう。
あとは、この巨大企業群が現在の食品偽装問題や労務問題などの流れの中で、不祥事を報道され 株価が下がるタイミングでしかけるというのが正解だと思います。