ジャストシステムについて
2009年キーエンスによる資本・業務提携、約45億円の第三者割当増資および創業者である浮川和宣、浮川初子両氏の辞任、キーエンス出身の役員参加で経営状況が大きく変化しています。
・取引先、従業員の削減
※売上高は、23年3月期に前年同期比▲17%減、その後は毎年増加を続けています。
従業員数は、毎年減少し21年3月期の873人から25年3月期の428人に大幅な減少。
支払給与は28億円から19億円に減少、平均給与は586万円から790万円に上昇しています。
・利益率の大幅な改善
※負担の大きかった借入金がキーエンスによる出資によって無くなった事と、上記削減によります。
赤字の垂れ流しから、経常黒字が恒常化しています。
・設備投資について
※平均給与が大幅に増額されており、人に対する投資を重視しているように見られます。
ただし、従業員数の減少による給与の支払総額は減少しており、利益率を最重要視していると思われます。
設備キャッシュフローは横ばいで、余剰資金は潤沢です。
余剰資金は譲渡性預金・定期預金で運用されています。
余剰資金を債券投資に回すキーエンスと同様に過度な投資は考えていないものと思われます。
【有価証券報告書より抜粋】
年度 21.3 22.3 23.3 24.3 25.3
売上高 143 億円 150 億円 128 億円 129 億円 139 億円
経常利益 △13億円 23 億円 16 億円 25 億円 32 億円
当期純利益 △18億円 19 億円 18 億円 23 億円 22 億円
純資産 101 億円 164 億円 181 億円 205 億円 226 億円
総資産 169 億円 202 億円 211 億円 234 億円 265 億円
純利益/売上高 -9.09% 15.33% 12.50% 19.38% 23.02%
売上高/資産 0.85倍 0.74倍 0.61倍 0.55倍 0.52倍
資産/純資産 1.67倍 1.23倍 1.17倍 1.14倍 1.17倍
ROE※ -12.87% 14.02% 8.84% 12.20% 14.16%
※ROEは上記数値から私が仮に算出したものです。日経会社情報(2014年新春号には10.4%、予想10.3%とありました。)
営業CF 5 億円 31 億円 35 億円 38 億円 34 億円
投資CF △4億円 △21億円 △6億円 △7億円 △42億円
財務CF △19億円 9 億円 △1億円 △1億円 △0億円
現金 26 億円 46 億円 74 億円 104 億円 98 億円
従業員 873人 757人 640人 544人 428人
平均給与 586 万円 587 万円 658 万円 723 万円 790 万円
平均年齢 38.1歳 37.5歳 38.8歳 39.5歳 38.8歳
勤続年数 11.1年 10.3年 11.11年 12.8年 12.3年
研究開発費 15 億円 13 億円 16 億円 15 億円 13 億円
給料 28 億円 25 億円 23 億円 20 億円 19 億円
株数 64,224,800 64,224,800 64,224,800 64,224,800 64,224,800
株価(高値) 345円 490円 427円 262円 689円
株価(安値) 93円 151円 144円 127円 164円
時価総額(高値) 222 億円 315 億円 274 億円 168 億円 443 億円
時価総額(安値) 60 億円 97 億円 92 億円 82 億円 105 億円
配当性向
・主な商品について
一太郎(毎年新Versionを発表)
ATOK(タブレット対応、クラウド化・定額制も進める)
ホームページビルダー(2010年2月買収)
cocoal(ココアル:重厚感のある写真アルバムの作成)
スマイルゼミ(タブレットのみで行う通信教育)
Just office(法人向けオフィス互換ソフト)
※売上構成が分からなかったのですが、個人的な感想として、『一太郎』など定番ソフトはあまり「売れている」という話は聞きません(私個人は『一太郎 承』を使用しています)。ただ、ATOKは携帯端末メールの日本語変換ソフトとして多く使われていると思われますし、「知らないうちに皆が使っている」商品となっているのではないかと思います。また、「ビジネスシステム」部門の売上も増加しており、一般ユーザーに広く販売する商品とともに、専門性を生かした個々の企業が必要なシステムを個別に制作していく事業にも積極的に進んでいくのではないかと思います。(25年3月にキーエンスから「企業内検索エンジン等、法人向けソフトウェアを譲受)
・投資対象として
2008年までの業績悪化で1株100円を割り込むまで低下した株価は、キーエンス出資のニュースでおよそ490円まで跳ね上がりましたが、その後、2011年にかけて130円まで低下します(推測:利益剰余金のマイナスや株式市場の低迷もありますが創業者である浮川両氏の大口売却が大きく影響していたのではないかと思います)。その後、増益発表や株式市場の高騰により、株価は1,000円を超える水準まで上昇し、現在も1,000円近辺で推移しています。時価総額で600億~700億と現状の利益水準からすると割高だと思います。ただ、今後の事業拡大と営業利益の増加を期待すれば割高感はなくなると思います。また、25年9月期で利益剰余金がプラスに転じ、復配を含めた利益還元が焦点となるであろうこと、人気のIT関連事業であることから市場で脚光を浴びる可能性があるとも言えます。価格変動も大きく、現状の投資環境からすれば、様子を見ながら株価が大きく下落するときに少額で保有するのが良いのかなと思っています。
・投資環境
株高要因
米国の金融緩和
日本の超金融緩和
株安要因
株価高騰による市場PERの上昇(世界市場で見て日本株は現状割高)
現状のPERを肯定するには日本企業の増益が必要だが、来期以降の増益期待には疑問あり
米国景気回復が進むと米国の量的緩和縮小が持ち上がり現在の株式市場においては下落要因となる
消費増税による景気低迷
輸出の鈍化
日米の金融緩和による株高の過熱感は相当なものだと思われ、株価急落の恐れが強く、株式投資に積極的になる時期ではないと思います。