会社のステージ別に"最適な指標”は異なる、という話
こんにちは。
シェアーズの山口です。
さて、皆さんは、投資するときにどんな指標を見ていますか? ものの本には、PERやPBRなどいろいろな指標が紹介されています。
しかし、“完璧な指標”は、存在しません。 先日、バフェットの投資先はフリーキャシュフローを長期にわたって 出している会社だと紹介しましたが、これはベンチャー企業には適しません。
指標は、状況でかわってきます。
例えば、企業の発展段階に合わせて、見るべき指標を 変えるのがよいでしょう。
企業の発展段階を、 「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の 4つにわけるとそれぞれの段階で、 有効な指標は以下のとおりです。
(これは知っている人がなかなかいない気がします。重要かも)
状況 指標 意味
導入期 PSR: “売上”に対する株価
成長期 PER: “利益”に対する株価
成熟期 PCFR: “キャッシュフロー”に対する株価
衰退期 PBR: “純資産”に対する株価
最初の導入期では、まだ利益は赤字かもしれません。 キャッシュフローも当然マイナスです。 ただ、これは、将来のための先行投資といえます。
この段階では、事業の当面の成果である売上に対して、 株価をみるのがよいでしょう。
売上の意味するところは、 「とりあえず、市場からは“評価”されている」 ということです。
売上成長率が30%以上の会社で、PSRが1倍なら ベンチャーであってもお買い得かもしれませんね。 こんにちは。
例えば上場したてのベンチャーのPSRを見てみましょう メタップス 3.2倍 グノシー 6.4倍 クラウドワークス 8.8倍
各社ともやや高めですね。この中では、僕はメタップスが 好きかな。「SPIKE」というゼロ円決済システムなどを提供 しているシンプルで挑戦的なベンチャーだと思います。
社長の佐藤航陽さんの「未来に先回りする思考法」も 洞察に溢れていてとても楽しいです。 『未来に先回りする思考法』
さて、次の成長期に入ってくると、 今度は、利益をベースとしたPERがお奨めです。
利益が意味するのは、 「その会社は、“価値”を出している」 ということです。
売上とは、社会に対する“貢献”であり、 利益とは、会社の“工夫”の結果である、ということです。
利益成長率10%以上の会社を、PER10倍以下で 買えたら、おいしいでしょう。
この段階の企業のPERを見てみましょう。 グリー 12.1倍 DeNA 18.7倍
ふむ、一時期に比べると昨今の株安でだいぶ買いやすく なりました。
グリーがPER低めでお買い得そうですが、ここで注意が必要です。
その利益成長がいったいいつまで続くのか、 十分に業界構造の将来を見通す必要があるということです。
基本的に、あと3年しかつづかないなら、たとえ上記の 条件でも厳しいと言えそうです。
二社ともガラケー・スマホのゲームで躍進しました。しかし次の 布石の打ち方や組織の強化をみると、創業者の南場智子さんが 復帰したDeNAのほうが、先端医療や電気自動車への投資や 新卒採用方針などをみていると長期的には強い気がします。
バフェット的投資の良さは、あと10年成長が続くものを PER10倍で買うところにあるのですね。 (そうなると、年間収益率は、20%を超えます)
あと10年成長が続くものというのは、二つの条件があります。
・普遍的な需要に守られていること(食う・寝る・遊ぶ) ・その需要を、ある程度独占できるということ(ブランド、規制)
先日紹介したジレット、コカ・コーラ、ワシントンポストなどです。
長期経済性の見通しが大事という理由はここにあります。
日本企業では、なかなか絶対的企業というのは存在しませんね。 現在のところ、ユニ・チャームや味の素ぐらいでしょうか(笑)? それでも味の素についていえば食品添加物に対する消費者の目が 厳しくなっているなど構造的な優位がゆらぎつつありそうです。
次は、成熟期です。 競合がひしめく成熟期では、キャッシュフローを 意識しなければなりません。 つまり、いくら利益が出ていても、一方で、 投資をかなり必要とする状況では、結局、キャッシュを 失うことになってしまうからです。
利益は、“意見”、キャッシュは、“事実”、ということです。
利益成長率が、10%を切ったあたりから キャッシュフローを意識しましょう。
では成熟期の企業のPCFRを見てみましょう。 ソフトバンク 7.2倍 楽天 20.1倍
PCFRは低いほど割安な指標ではありますが 業界の平均値には目を通しましょう。 ちなみにKDDIとドコモのPCFRは約9.5です。 ソフトバンクは社長候補だったアローラ副社長の退任以降 株価が冴えませんね。僕は孫さんがずっとやればよいと 思っていますが(ユニクロの柳井さんもそうですが、社長を 譲るのは成功した創業社長にはとても困難なことです)
最後の衰退期では、利益というよりは、過去に稼いだ 純資産に対する株価を表すPBRが役に立ちます。 重厚長大系の企業で、PBR投資が有効なのはそのためです。
さて、いかがでしょうか?
結局、万全な指標はありません。
私たちが意識すべきは、企業の成長段階に合わせて 投資指標を変えるということなのですね。
今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
(今日の一言) 軽井沢に転居して1ヶ月、今週は両親と兄夫婦と小さな甥が 2泊遊びに来て久しぶりの一家だんらんを楽しみました。 もっとも、父は酔っ払ってテラスのサッシに飛び込んで壊し、 甥はさっそく買ったばかりのクィーンベッドのシーツを汚して くれたのですが。。そういうリスクも折り込み済で、楽しい時間 を過ごせました。