正念場!
ライフネットが苦戦している。
ネットでの生保の誕生にはそもそも疑問がある。 株式取引なら何度も行う必要があるため、インターネット取引は便利だが、生保の加入は基本、人生で一回である。であればわざわざネットなど使わなくてもよい。通信販売と電話で十分である。そういうわけでこのライフネット生命の価値は、フレッシュネス(新鮮さ)にあったはずだ。レガシーコストを抱えた既存生保とのすみ分けはイメージであって本質的なしくみではない。しいていえば、逆ざやや大きな本社ビルなどのコストを抱えていないことだ。
そもそも保険はすでに欧米では斜陽産業である。コンピュータの計算能力が高まり、個人のリスクが簡単に把握できるようになった社会では、薄い利ざやを互いにとりあっているに過ぎない。日本における生保加入率が90%を超えていたのは、家族が生死を互いに支え合う最終的なコミュニテイ(共同体)の中心であったからだ。だが、これからは家族は、他人同士の意思をもったつながりの一つとなる。コミュニティは別に作られるはずだ。その中で生命保険が機能するとしてもそれはだいぶ先だ。
ライフネットが狙うべき次の保険市場は、健康保険組合である。健康保険組合はすべて現在巨額の赤字を抱えている。国民皆保険制度のせいで支払い保険金が膨れ上がっているからだ。現制度では、加入者は医者にかかることを躊躇しない。コストは他人のものだからだ。
しかし新しい健康保険組合にはチャンスがある。なぜなら病気以前、つまり未病段階でのリスク管理が可能になってきたからだ。DNA鑑定、ウェラブルデバイスによるライフログ、それらにともなう個人カルテの作成とアドバイスを組み合わせることで病気のリスクを下げ、通院のコストを下げることに成功すれば健康保険組合は儲かるようになる。それは個人の健康志向を保険料の低減に結びつけることができるからだ。健康であればあるほど保険料が安くなるのは、あまり車を運転しないドライバーの自動車保険料が安いのと同じ当たり前のロジックである。新しい健康保険組合には価値がある。あるいは、掛け捨ての生命保険でなく、資産形成のための個人年金に舵を切るかだ。
さて、ライフネットの株価だが、IPO初値は、PBR5倍の時価総額500億をつけたが、現在は時価総額200億円である。先だってKDDIが資本増強に応じ、同社は30億を出資、16%を保有し筆頭となった(現状株価はこれに等しい)
ここからが正念場である。社会的信用はともかくも、経営力・機動力・戦闘力は強いわけだから、社会機運の変化を敏感にとらえて、立て直すことを願っている